業務内容

電力/ガス

電気事業・ガス事業への新規参入・撤退、料金メニュー設計、各種約款・契約書の整備に加え、最新の制度改正への実務的な対応や、監督官庁との折衝に関するアドバイスを提供し、安定的かつ持続的な事業運営をサポートします。

電気事業・ガス事業への新規参入・撤退

電気事業者・ガス事業者として参入するためには、一定の登録・届出等が必要となります。

例えば小売電気事業を営む場合には、経済産業大臣の登録を受ける必要があり(電気事業法第2条の2)、当該登録申請に際して、登録申請書以外にも添付書類(事業計画書や小売電気事業遂行体制説明書等)の提出が求められることに加え(同法第2条の3第2項)、電力広域的運営推進機関への加入も必要となります。

当事務所では、要件の充足確認、必要書類の作成、当局との折衝、そして事業開始後の体制整備まで、スムーズな新規参入を実現するための実務的なサポートを行っています。

また、新規参入とは逆に小売電気事業者が事業を撤退する場合、需給契約の解除の可否及び方法を検討する必要があり、また、「電力の小売営業に関する指針」において小売電気事業者が需給契約を解除する場合にとる必要のある措置が定められています。

当事務所では、需給契約の解除に関する法的整理やガイドラインの内容を踏まえ、事業戦略や顧客対応の観点も考慮した実務的かつ戦略的な撤退をサポートします。

制度改正への対応

電気事業法・ガス事業法等の法令や、これらに関連する制度は、小売全面自由化や市場の創設等の政策を背景に頻繁に改正が行われています。

例えば、2024年度から小売電気事業者等における負担が開始している容量拠出金制度(電気事業法第2条の12、電力広域的運営推進機関定款第55条の2)は、各小売電気事業者の料金メニュー設計やコスト回収方法に直結するものであり、発電部門を持たない小売電気事業者にとっては大きな負担となっています。

制度改正に的確に対応することは、リスクを回避するだけでなく、新たなビジネスチャンスや収益機会を広げる重要な契機となります。

当事務所では、最新の制度動向を踏まえた実務的かつ戦略的なリーガルサービスを提供し、クライアントの事業成長を支援します。

料金メニュー等の設計

料金メニュー等の設計は、事業者様の経営判断にとどまらず、電気事業法・ガス事業法や関連ガイドラインに基づく規制を踏まえて行う必要があります。

例えば「電力の小売営業に関する指針」や「ガスの小売営業に関する指針」においては、「料金の算出方法を明確に定めないこと」(「当社が毎月末に請求する額」や「時価」等)が問題となる行為として挙げられているなど、料金に関連した様々な規制がなされています。

特に電力については、市場価格に連動した料金メニュー等の複雑な料金体系が増加しているため、料金設定に関連した規制には十分留意する必要があります。

当事務所では、規制内容に即した料金設計につき法的助言を提供し、需要家にとって分かりやすく、かつ規制にも適合した料金プランの構築をサポートします。

小売供給約款及び需要家交付書面の整備

小売供給約款の整備や、電気事業法・ガス事業法に基づく需要家への交付書面(契約締結前交付書面、契約締結後交付書面)の作成・レビュー・改訂に関する対応を行っています。

需要家交付書面の記載事項や需要家への説明事項は、法令・規則及びガイドラインによって細かく規定されており、不備がある場合には電力・ガス取引監視等委員会による指導対象となるリスクもあります。

約款や需要家交付書面の整備は単なる形式的対応にとどまらず、需要家との長期的な信頼関係の構築のためにも重要な意義を持ちます。

当事務所では、制度改正や近年の電力・ガス取引監視等委員会の傾向も踏まえ、ビジネスモデルや戦略に即した実務的かつ分かりやすい書面整備を重視しています。

これにより、法令遵守を確保するだけでなく、需要家との信頼を高め、安定的・持続的な事業運営を支えることを目指しています。

再生可能エネルギー/発電プロジェクト

太陽光、風力、水力、バイオマスなど多様な再生可能エネルギー発電プロジェクトについて、開発計画、ファイナンス、EPC・O&M契約の整備から運営段階に至るまで、ライフサイクル全般を幅広くサポートします。

また、再生可能エネルギー発電設備やエネルギー関連企業の買収・売却(M&A)に関する助言に加え、再エネ特措法に基づく住民説明会対応など、制度に即した専門的なリーガルサービスを提供しています。

プロジェクト開発・ライフサイクル支援

太陽光、風力、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギー発電プロジェクトについては、事業構想段階から運転開始後の規制対応まで、多岐にわたる法的課題に直面します。

開発段階においては、用地取得や賃貸借契約の整備、環境影響評価(アセスメント)や各種許認可の取得など、多様な手続が必要となります。

さらに、金融機関や投資家との協議を踏まえたファイナンススキームの構築や、EPC契約・O&M契約の作成・交渉を通じて、建設・運営体制を確立することが不可欠です。

当事務所では、こうしたプロジェクトライフサイクル全般にわたる実務を、法的側面から支援しています。手続や交渉を効率的に進めることで事業開始までのスピードを高めるとともに、契約や制度対応を適切に設計することで、長期的な収益性と事業の安定運営を確保できるよう包括的にサポートします。

M&A・投資

再生可能エネルギー発電設備やエネルギー関連企業の買収・売却に関して、取引スキームの構築、法務デューデリジェンスの実施、持分譲渡契約や事業譲渡契約の作成・レビュー・交渉・クロージングに至るまで、一連のプロセスを一貫してサポートします。

M&A・投資を行う場合には、再エネに関連する制度にも留意する必要があります。

例えば、2024年4月に改正された再エネ特措法により、FIT・FIPの認定申請又は変更認定申請を行う場合には、説明会の開催又は事前周知措置の実施が必要とされています。

M&A・投資の観点では、事業者変更や事業者の「密接関係者」(事業者が(i)持分会社の場合は当該事業者の社員、(ii)株式会社の場合は議決権の過半数を保有する株主、(iii)匿名組合出資が行われている場合はその過半数の出資持分を保有する出資者、(iv)これらの者の親会社を指します。)の変更が生じる場合も、説明会又は事前周知措置の実施が必要となります(再エネ特措法施行規則第8条の2第1号、第2号)。

当事務所では上記のような制度状況を踏まえた対応を行うとともに、国内外の投資家、金融機関、エネルギー事業会社が関与するクロスボーダー案件や複雑な投資スキームにおいても、豊富な実務経験を踏まえた実践的なアドバイスを提供し、リスク管理と取引の円滑な遂行の両立を支援します。

環境関連規制

環境関連規制への対応や各種許認可の取得に関し、制度の最新動向を踏まえた実務的なサービスを提供しています。また、カーボンニュートラル、ESG、サステナビリティ対応など、企業活動に直結する環境課題について、包括的なサポートを行っています。

関係省庁や自治体との折衝や報告対応についてもサポートしております。

環境規制対応・許認可取得

排出基準や廃棄物処理、水質・大気汚染規制などの各種環境法令に基づく実務対応に加え、事業遂行に必要な環境関連の許認可取得をサポートします。

例えば太陽光発電事業の場合、各事業によって異なりますが、土地関係では以下の許可等を取得する必要が生じるケースがあります。

  • 森林法に基づく林地開発許可
  • 宅地造成及び特定盛土等規制法に基づく工事許可
  • 砂防法に基づく行為許可
  • 地すべり等防止法に基づく行為許可
  • 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に基づく行為許可

カーボンニュートラル・ESG/サステナビリティ

脱炭素経営に不可欠なカーボンニュートラル戦略、ESG開示やサステナビリティ方針の策定について、制度対応と実務上の実行の両面から支援します。

非化石証書やカーボンクレジットの活用に関する助言も行っており、企業価値向上に直結する対応をアドバイスします。

当局対応・戦略的助言

規制当局との協議や報告義務対応に関して、クライアントの立場に立った調整・折衝を行います。

例えば、本来必要である需要家への交付書類が未交付であったことや、需要家への説明義務が履行できていなかったことが事後的に発覚した場合には、速やかに是正対応を採るとともに、電力・ガス取引監視等委員会への報告を行うことについても検討する必要があり、初動が非常に重要となります。

当事務所では、法令遵守の確保にとどまらず、需要家及び当局対応も考慮した戦略的な助言を提供し、事業の持続可能性と社会的信頼の確立を支援します。

エネルギー関連取引

電力・ガス事業に加え、再生可能エネルギープロジェクト、地域新電力の取組みなど、多様なエネルギー関連ビジネスにおけるスキーム構築を支援しています。
コーポレートPPAやEPC契約の作成・レビューをはじめ、運用・保守(O&M)契約、燃料調達契約など、事業のライフサイクル全体をカバーする契約実務に対応しています。

エネルギービジネスのスキーム構築

電力・ガス事業、再生可能エネルギープロジェクト、地域新電力など、エネルギービジネスを立ち上げる場合には、様々な規制や市場環境を踏まえたスキーム設計が不可欠です。

当事務所では、事業モデルの構築、共同事業契約や業務委託契約の整備、リスク分配の設計を支援し、安心して事業を開始できるよう実務的にサポートします。

契約書の整備

エネルギービジネスに関連する契約として、例えば以下の契約のドラフティング、レビュー、交渉対応を行っています。

  • コーポレートPPA:長期かつ安定的な電力調達を目的とする企業や自治体などの需要家が発電事業者から再生可能エネルギー電力を直接購入する契約(通常10年~25年程度の長期間)
  • EPC契約(設計・調達・建設契約):発電設備の建設に伴う設計・調達・工事に関する契約(発電設備を対象とする場合、性能保証や工事期限が設定され、要件を満たさなかった場合の価格調整条項を設けるケースが多い。)
  • O&M契約:発電設備の運用(Operation)と保守(Maintenance)を委託する契約
  • 燃料調達契約:LNG・石炭・バイオマス燃料などの長期供給に関する契約
  • 共同事業契約・業務委託契約:複数事業者による共同プロジェクトや外部委託に関する契約
  • 取次委託契約:委託者を小売電気/ガス事業者、受託者を取次店として、委託者が小売電気/ガス事業者として供給する電力/ガスを、取次店が需要家との間で小売供給契約を締結することによって需要家に対して販売することを委託する契約

地域新電力の取組み支援

地域新電力の設立・運営にあたっては、電気事業法上の登録や需給契約の整備だけでなく、自治体・地元企業との協働体制の構築が重要です。

当事務所では、以下のような局面において法的支援を提供しています。

  • 会社設立・ガバナンス整備:自治体や地元企業との共同会社設立における定款整備、株主間契約の作成・レビュー
  • 出資スキーム対応:自治体等から出資を受ける際のスキーム設計や、関連する法規制への対応
  • 登録・許認可取得:電気事業法に基づく登録申請支援、関係当局との折衝
  • 需給契約・約款整備:需要家との契約や料金メニュー設計、電力供給約款の作成・レビュー
  • 地域との合意形成:住民説明会の準備・実施支援、自治体・地元企業との協議調整
  • 制度活用・収益モデル構築:FIT/FIP制度、非化石証書の活用、補助金・助成制度の利用に関するアドバイス

エネルギー・環境関連の訴訟・仲裁対応

エネルギー・環境分野の取引は長期的かつ高額の投資を伴うことも多く、また多様な利害関係者が関与するため、紛争の発生は避けられないリスクの一つです。

当事務所は、エネルギー取引に関連する訴訟や国際仲裁に加え、環境規制をめぐるコンプライアンス問題まで、幅広い分野の紛争解決に対応しています。また、紛争解決で培った実践的な知見や勘所を契約交渉や取引スキームの設計に活かし、逆に取引案件を通して得た知識・経験を紛争解決に反映させることで、より実効性の高いアドバイスを提供しています。

エネルギー取引・プロジェクトに関連する紛争

エネルギー・環境分野の紛争には、通常の商取引とは異なる特徴があります。プロジェクトは長期的かつ多額の投資を前提とすることが多く、複数の利害関係者(事業者、金融機関、EPC/O&M業者、規制当局、地域コミュニティなど)が関与するため、契約条項の解釈や履行をめぐる対立が複雑化しやすい点が特徴です(特に、取引時に明確に想定されていなかった状況・問題につき、契約文言が一義的ではない場合、当事者の合理的意思解釈や補充的意思解釈が法的論点となることがあります)。また、工事遅延や性能保証の問題はプロジェクト全体のスケジュールや収益性に直結し、価格調整紛争(price adjustment dispute)や不可抗力(MAC)条項の解釈も国際的な市況変動と密接に関連するため、解決に高度な専門性が求められます。

当事務所は、電気・ガス事業に関連する取引紛争(PPA等)、発電設備の建設・運営における契約紛争(EPC契約、O&M契約等)に幅広く対応しています。近時の例としては、EPC契約に関する紛争において国内事業者を代理して交渉対応を行った事例や、太陽光発電所の開発・運営会社の持分譲渡をめぐる国際仲裁手続において欧州系企業側の代理人を務めた経験も有しています。

こうした経験に基づき、当事務所は単なる紛争対応にとどまらず、契約交渉や取引スキームの設計段階から予防的な法務支援を行い、取引と紛争解決の知見を相互に活かすことで、実効性の高いリーガルサービスを提供しています。

環境規制・コンプライアンスに関連する問題

排出基準や廃棄物処理、水質・大気汚染規制、環境影響評価など、環境関連法令に基づく規制当局との対応やコンプライアンス違反をめぐる紛争に対応します。行政処分に対する不服申立や、国際的な環境規制をめぐる紛争など、複雑化する環境分野のリスクに対して包括的なサポートを行います。